2011年11月13日日曜日

ヘルベチカ

それは50階から飛び降りた男の話。

男は落ちながら考えた。



ここまでは大丈夫。

ここまでは大丈夫。

ここまでは大丈夫。



大切なのは落下ではない。


着地である。



僕の好きな映画『La Haine』で使われている詩。


偶然にもシドニーで滞在したホテルが50階で、

そのテラスからの景色を眺めながら、

この詩は、僕の頭の中で何度も繰り返された。



こんな事を言うのも何ではあるのだが、

僕は美しい夜景や、言葉にできない雄大な夕日を観ながら、

いつに死ねるのであろうかと、真面目に想っていた。


そんな事を言うと、アイツは根暗なヤツだと想われてしまいそうなのだけど、

僕にとっては、ポジティブでもネガティブでもなく、

ただただ、ごくごく自然に抱く感情として、それは在る。


確かに。


遠くの方に沈む夕日は力強く、その光は世の中を美しく包み込む。

真下をみれば、人々が地を這うアリのように街の隙間を行き交っている。



そんな事を言うと、アイツは根暗なヤツだと想われてしまいそうなのだけど、

そう想う人がいるのだとしたら、

僕はもしかしたら、根暗なのかもしれない。


しかし、


それは、在る。




確かに。

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