それは50階から飛び降りた男の話。
男は落ちながら考えた。
ここまでは大丈夫。
ここまでは大丈夫。
ここまでは大丈夫。
大切なのは落下ではない。
着地である。
僕の好きな映画『La Haine』で使われている詩。
偶然にもシドニーで滞在したホテルが50階で、
そのテラスからの景色を眺めながら、
この詩は、僕の頭の中で何度も繰り返された。
こんな事を言うのも何ではあるのだが、
僕は美しい夜景や、言葉にできない雄大な夕日を観ながら、
いつに死ねるのであろうかと、真面目に想っていた。
そんな事を言うと、アイツは根暗なヤツだと想われてしまいそうなのだけど、
僕にとっては、ポジティブでもネガティブでもなく、
ただただ、ごくごく自然に抱く感情として、それは在る。
確かに。
遠くの方に沈む夕日は力強く、その光は世の中を美しく包み込む。
真下をみれば、人々が地を這うアリのように街の隙間を行き交っている。
そんな事を言うと、アイツは根暗なヤツだと想われてしまいそうなのだけど、
そう想う人がいるのだとしたら、
僕はもしかしたら、根暗なのかもしれない。
しかし、
それは、在る。
確かに。
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